6月から7月いっぱいにかけてはジョーフィッシュのハッチアウトが観察できるようになります。
早朝というより深夜から動く感じになるので、眠たいのがつらい。
でもその瞬間を見れたなら、そこまでの苦労が嘘のような感動に包まれます。
さてここで少し話しておきたいのが当店のハッチアウト観察についてです。
以下の事に注意・配慮しながらこれからも永続的に屋久島の海でジョーフィッシュのハッチアウトが観察できるようにと思っています。
①毎年ジョーフィッシュの個体数が変わるものの当店は約3ペアを観察対象としています。
理由としてはストレスをかけすぎないためです。
それならば分散してたくさんの個体を追いかけた方が・・・なんて思うかもしれませんが、口内保育をしてる状態を観察するというだけでもジョーフィッシュからしたら結構ストレスなんですよね。
口内保育中の卵の状態を確認してハッチアウトを予想するのですが、その予想のための卵確認の過程で崩れてしまったであろう巣を何度か見たことがあります。
確認の過程なのか自然の事なのかはっきりは言えませんが、少なくともそういったことを一つのエリア(タンク下)から減らすという意味合いでも、僕自身が観察する個体を限定するという考え方で巣が崩れるリスクを下げる事に繋がるのではないだろうかと考えます。
その中でも比較的に用意に卵を見せてくれる個体を約3個体を決めて観察します。
比較的容易というのは、観察の方法・卵の確認方法は何種類かあるのですが、一番楽にジョーフィッシュ自身が簡単に見せてくれる個体になります。
それに該当しない、いうなれば神経質な他のジョーフィッシュのハッチアウトがごくごく当たり前の自然な状態で行われることで、今後も末永く観察できる要因になると思うからです。
また観察する個体の選定はハッチアウトによって決めることもあります。
初めてのハッチアウトであろう若い個体、ハッチアウト時に神経質な様子の個体はなるべく避けます。
ハッチアウトが始まったらやめられないものの、巣穴に引っ込んだり出てきたり、また巣穴の中で顔を出さずにハッチアウトを続ける個体もいます。
そのような個体と判断したら、別の個体に対象を変えます。
その方が見やすさもさることながら、ストレスを与えすぎないという観点からそうすべきだと思うからです。
その判断は5月末から観察をはじめ決めていきます。
ゲストの皆様には6月中旬以降がハッチアウトのおすすめとして伝えていますが、こういった準備・観察の期間が5月3週目以降から6月2週目まで一人で夜な夜な動き早朝に潜り判断しているためです。
その年のおすすめ固体や、その個体ごとに微妙に違うハッチアウト時間などの予想傾向が立てやすく、皆様にお勧めしやすい時期としても6月中旬になるということです。
②ハッチアウト予想日とその日の天候及び海況判断について
ハッチアウトの日はおおむね予想できるものの、これまた自然相手なので一筋縄ではいきません。
行ってみたもののハッチアウトしないということももちろんあります。
そういった「外れるリスク」をご理解いただいてからご案内になります。
また2020年現在はジョーフィッシュのハッチアウトを見に行くのはタンク下ビーチのみとなります。
ビーチといっても林道のような雰囲気のある道を通り、海に面した小さな低い崖からエントリーすることになります。
僕は休みの日にカメラを持って潜るときはこの道を歩き「タンク下」に入ります。
慣れてしまえば楽ですが慣れて方には大変だと思います。
さらに真っ暗な中その道を歩くことになりますので、天候が大雨予報の場合は開催しません。
滑りやすくなること、滑って転んだ場合は大けがに繋がりやすいこと、落石がある場合があることなどの理由です。
またタンク下側に波が当たる予報の場合は同じく開催しません。
普段よりも開催できると判断する波予報が厳しくなるイメージです。
これもまた暗い中でのエントリーになるので波など普段目で見えてるものが見えずらいためです。
少量の雨、少しの波など条件次第では雨でも波があっても開催いたしますが、その条件が厳しくなるということをご理解いただければと思います。
また参加されるゲストの皆様が今までのダイビングでないとダイビングを経験してくださってることが参加の最低条件になります。
こちらもご理解ください。
③ハッチアウト観察時および撮影時の注意事項
これが一番大切な部分ですね。
上記二つの事項については僕自身が気をつけて判断させていただいてることになるので、皆様からご理解いただければ問題ないことなんです。
この観察時及び撮影時の注意事項は、実際にハッチアウトを行うであろうジョーフィッシュを目の前にしている状態で皆様に注意していただくことなります。
①でチェック確認済みのジョーフィッシュを観察に行くタイミングはその個体によって朝の集合時間や、エントリーの時間も若干変わります。
また天候によっても変わります。
当店は大雨の場合は基本行かないので(2020年現在)、集合も早くなることが多いです。
雨の日より、晴れの日の方がハッチアウトが若干早いためです。
「日の光がうっすらとさしてきたらハッチアウト」と、思いがちですが日の出よりさらに早い(おおよその時間はあります)タイミングでハッチアウトすることが多いです。
普段真っ暗な海の中で薄明かりを頼りにするジョーフィッシュからしたら、僕たちが明るさを感じる前から「薄明かり」には気が付いているだろうと予測されます。
実際そのような個体も多いです。
もちろん個体差はあります。
なのでチェック時の個体によって時集合・エントリーの時間は変わります。
この「明るさ」について書きましたがこれは注意していただくことが皆様のお持ちのライトの光に関係してくるためです。
真っ暗な海にエントリーしますので、通常のナイト時と同様にライトを使用して潜ります。
ですがジョーフィッシュの穴の前に来たらそうはいきません。
実際の自然に限りなく近い状態でストレスを少なくハッチアウトしてもらうために、ジョーフィッシュの前についたらライトを消していただきます。
どんな小さなライトもです。真っ暗な海で待つということによるストレスもあると思います。
ですがここではライトは使用しないでください。
写真の露出を確認したい場合はその周辺でジョーフィッシュの方に向けずに行ってください。
暗い環境は一緒ですので、十分露出の確認もできますし、スタンダードに上にあるようなハッチアウト写真を撮りたい場合は日中の設定と同じで構いません。
露出確認のためのストロボもジョーに向けてしまえば、一瞬の光ですが何万ルーメンもの光になります。
つまりライトの光より圧倒的に明るいってことです。
ジョーフィッシュのハッチアウト確認については僕が手持ちのライトの光をさらに覆い微細な光で確認しますし、赤色ライトによって確認します。この赤色ライトですら長時間直接は当てないように気を付けています。
ジョーフィッシュはハッチアウト前に必ず予行練習を始めます。
この姿も可愛く愛らしいのです。
この予行練習が始まったら確実にハッチアウトに入ります。
予行練習動作後、巣穴に潜り、出てきたときには卵を咥えています。
予行練習動作時にベルでハッチアウト間近なことを知らせます。
巣穴に潜り、出てきたとき卵を咥えていれば僕のライトを点灯し、撮影スタートの流れになります。
僕のライトが点灯しましたら、お持ちのライトを点灯させていただいてOKです。
すぐにAFも聞く状態になりますので安心してください。
また、卵を持った状態できょろきょろしてますので卵から幼魚がハッチアウトするまでには十分時間があります。
焦らなくても大丈夫です。
ハッチアウトが始まりましたら短い個体で1~3分、長い個体で10分以上してくれます。
大量にハッチアウトが始まったらあっという間にラストを迎えますので、しっかり撮影を楽しんでください。
予行練習時にライトを全員でつけてしまうと、巣穴の中で隠れたままハッチアウトを行う状態になってしまうこともあります。
僕がライトをつけるタイミングは卵を持って上がってきたときがメインです。
その後少しでも隠れた状態になりそうであれば再度消灯していただくこともあります。
ですが、このようなことが基本的にはあまりなく、待っていただいた分しっかり撮影できる個体を①で書きましたように調べていますのでここ数年煙突式(隠れたハッチアウトを行う事)になったことはありません。
以前この煙突式になってしまったときはジョーフィッシュにもその時のゲストさんにも申し訳なく思ったことを覚えています。
自然な状態でハッチアウトしてもらうことは、ジョーフィッシュにとってはもちろんのこと撮影側の僕たちにとっても非常にいいことです。
そのため「暗い海の中でライトなし」の状態で待つことをご理解いただきたいと思います。
非常にストレスだろうと思います。
僕も一人で調査時に一人でその状態で待つことは本音を言うと怖いですしストレスです。
以前じっと待っていたら僕の太ももの上を、僕の顔ほどの大きさのカイカムリが通っていき、ぞぞっとしたことを毎回思い出します(笑)
それだけ真っ暗ということです。
④最後に
2008年から2010年まで屋久島で勤務していた時からこのハッチアウトに興味があり、その時すでに妻が務めていた老舗の生態系フォトショップさんはもうこのハッチアウトについて当然詳しく、一生懸命ヒントはないかブログ等を読み、朝確認しに行っていたことを思い出します。
勉強不足で海の中で一時間以上待ったこともあります。
その時初めて見れたので良かったですが(笑)
行ったら終わっていたのに気が付かず、ずっと持っていたこともあります。
2014年、屋久島で自分のお店をスタートさせて今に至るまで、この時期のジョーフィッシュを追いかけてきました。
3日連続外したこともあります。
4日目に力尽きて寝坊して見逃したこともあります。
見ていただけなったゲストさんも、それはもうたくさんいらっしゃいます。
光を当てすぎてハッチアウトを慌てさせてしまい反省したこともあります。
先述したようにライトの点灯が早すぎたせいだと思いますが、煙突式になってしまい、ハッチアウトした稚魚が巣穴からひょこひょこ出てくる魂の成仏的な感じになってしまったこともあります。
色んな失敗や勉強を重ね、3年前からこのスタイルが確立し、それからゲストの皆様と観察を楽しんでいます。
自信をもって、きちんと自分の経験・勉強からくる配慮を行い、これからもここ「屋久島・タンク下」で末永くこの素晴らしく崇高なジョーフィッシュのハッチアウトを、ゲストの皆さんと楽しんでいきたいと願っております。
これが僕たちDIVEANCHORのジョーフィッシュハッチアウトの観察方法です。
ご理解いただき、ゲストの皆様と楽しく感動に包まれたいと思います!!!
長文、お付き合い頂きましてありがとうございました。
DIVEANCHOR
代表 福山幸広
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